モノのインターネット(IoT)のためのブロックチェーンベースのアクセス制御

モノのインターネットの課題

IoTデバイスの急速な普及は、ヘルスケア、交通、スマートホームなどさまざまな分野に革新をもたらし、シームレスな接続と自動化を実現しています。しかし、こうした利便性の裏で、セキュリティとプライバシーに関する深刻な課題が浮上しています。多くのIoTデバイスはユーザーの身近で動作し、機密性の高い個人情報を収集するため、不正アクセスやデータ漏洩のリスクが高まっています。 これらのリスクを軽減するためには、誰がどのリソースに、どのような条件でアクセスできるかを制御するアクセス制御メカニズムの導入が不可欠です。しかし、IoTの特性――多様性とリソース制限――により、従来の方式をそのまま適用することは困難です。そのため、多くのシステムでは中央集権的な仕組みに依存していますが、これは単一障害点(single point of failure)という大きな弱点を持ち、1つのエンティティの攻撃で多数のデバイスが影響を受けるリスクがあります。

ブロックチェーン・ベースのアクセス制御

こうした中央集権の課題を解決する手段として、ブロックチェーン・ベース・アクセス制御(BBAC)が登場しました。BBACは、分散型ネットワーク上でアクセス制御を行う仕組みであり、DDoS攻撃やMiTM攻撃、単一障害点の問題を排除できるという利点があります。 一方で、BBACにも新たな課題があります。特に重要なのがスケーラビリティです。多くのパブリックブロックチェーンでは処理速度が遅く、コストも高いため、大規模なIoT環境では現実的ではありません。また、ブロックチェーンは誰でも参照可能な公開台帳であるため、プライバシーの確保にも課題が生じます。これらの課題を安易に解決しようとすると、かえってセキュリティが損なわれる恐れもあります。 そこで私たちの研究では、ゼロ知識証明(ZKP)をはじめとした先進的な暗号技術を活用し、セキュリティ、プライバシー、スケーラビリティを同時に向上させるアプローチを提案しています。これにより、安全かつ実用的なIoTアクセス制御の実現を目指しています。